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 Air 
  〜Farewell〜
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 道教の教えの中に『陰陽説』というのがある
 光の当たる場所には影ができるように、物事は必ず相反する二つのものから成り立つというものだ
 たとえば
 
 空と大地 山と谷

 表と裏 上と下 右と左

 前と後ろ 始めと終わり

 そして・・・男と女


 『陰は陽を好み、陽は陰を欲する』

 なんていうけれど、それは嘘だと思う



 だって、『男』は『女』を欲してくれなかったから・・・












 「・・・降りだしてきましたね・・・」

 運転手の呟きに、私は窓の外へ目をむけた。
 先程まで雲ひとつ浮かんでいなかったのだが、いつの間にか空は暗雲に覆われてしまったようだ。
 大粒の雨が、窓ガラスにぶつかり、弾ける。
 車の振動―――殆ど感じることはないけれど―――にあわせ、
 揺れながら落ちていく水滴をぼんやりと眺めながら、
 私は昨日の電話を思い出していた。






 ―――昔からそうだ
 嫌な予感ほど良く当たる

 今回だって例外じゃない。
 携帯電話の着信音が鳴り出した瞬間、背中に寒気が走った。
 何事だろう・・・と、発信者の名前を確認する。
 
 相手は・・・・・滋さん。

 出てはいけないような気がした。
 出てしまったら、何かが壊れてしまうような、そんな危険を感じた。

 ベッドに携帯電話を放り投げる。
 
 ・・・出なければ・・・大丈夫
 出なければ・・・今までどおり、何も変わらないから・・・・・

 鳴り止め・・・
 私の思惑とは裏腹に、電話は切れることなく鳴り続ける。
 いつもは無意味に鳴らすお気に入りの着信音も、今だけは聞きたくない。

 止まれ・・・・・

 コール音10回。
 ベッドの上で鳴り続ける電話から目が話せない。
 
 止まって・・・・

 コール音20回。
 電話に向かって枕を投げつける。

 お願いだから・・・

 コール音30回。
 ・・・やっと、音が止まった。
 ほっとしたのもつかの間。電話から、小さな声が微かに聞こえる。
 
 ・・・・しまった
 留守番電話に切り替わってしまったんだ・・・・・

 無機質な音声ガイドの後に、それとは対照的な滋さんの声が続く。


 『・・・・・桜子、いないの・・・・・?』


 いつもと違う、抑揚のない声。
 それを耳にした瞬間、何故かとても残酷な気分になった。

 ・・・このまま、切ってしまおうか・・・

 一瞬、そんな考えが頭をよぎった。
 そんな思惑に気付くことなく、滋さんの声は続く。


 『・・・・・今ね・・・信じられないことがあって・・・どうしても桜子に聞いて欲しかったの・・・』


 
      司が・・・・・『結婚するか?』って言ってくれたんだよ・・・・・



 固い鈍器で、後頭部を殴られたような気がした。
 頭が重くなり、思考回路が停止する。
 身体は全く思うように動かない。
 殆ど無意識のうちに携帯電話を持ち、壁に向かって思い切り投げつける。

 パリン・・・・・

 小さな破裂音とともに、細かなプラスチックの破片が床へ飛び散る。
 
 ・・・・・キラキラしてて、綺麗だな・・・・・

 ぼんやりとした頭で、そんなことを思った―――――








 その後のことはよく覚えていない。
 次の朝の光景。
 部屋中に散らかっていたアルコール類の空き瓶と、鏡で見た自分のひどい顔。
 顔全体がむくんでしまって、瞼なんか殆どお岩さん状態だ。

 ・・・・・エステに行かなきゃ・・・・・

 冷静にそう思った自分が、惨めで滑稽で。
 腹の底から笑いがこみ上げてきた。







               



 「・・・このまま降りつづけるんでしょうかね?」

 降るんじゃないかしら・・・?

 マッサージのおかげで幾分かまともになった顔をガラスに映し見、ぼんやりと答える。
 この腫れぼったさは、暫く続くだろう・・・
 それだけで、憂鬱だ。

 小さなため息をひとつ。
 何故だろう、平日の昼間だというのに車が多い。

 はやく進まないか・・・
 苛々と窓の外の景色に目をやると、ある人影が視界に飛び込んで来た。
 買ったばかりだろうビニール傘を差し、混雑する歩道を颯爽と歩く、背の高いスーツ姿の男性。


 「・・・・・ここで降ります! 自分で帰るから・・・」


 そう叫んだのと、走る車のドアを無理やり開けたのは、殆ど同時だったと思う。




















 「・・・お前らしくねーな。あんな無茶なことして・・・・・」

 差し出されたタオルを受け取り、濡れた髪を拭く。
 車から落ちた時に打ちつけた足からは、見事に流血していた。
 ストッキングも見るも無残に敗れ、こんな姿で彼の前にいることがとても恥ずかしい・・・

 「気をつけろよ。下手したら死んでたんだぞ?」

 「・・・・・・・・」

 きつい口調でたしなめられ、ばつが悪くなり俯く。

 確かに道明寺さんの言うとおり、私はかなり無謀なことをした。
 混雑していたため、スピードが出ていなかったとはいえ、動いている車から飛び降りたのだ。
 車のブレーキ音に、周囲が一斉に注目する。
 取引先からの帰りだったという道明寺さんもそのうちの1人で、
 怪我をしたのが私だとわかると、すぐに駆け寄った。
 おろおろする運転手を無理やり帰し、携帯電話で自分の車を呼び、道明寺邸まで私を連れてきてくれた。
 
 『ウチの方が近いから』

 なんて言っていたけれど、きっとわかってくれていたのだろう。
 この格好で帰っても、皆に騒がれ、落ち度のない運転手に被害が及ぶだろうことを。
 ぶっきらぼうな優しさが嬉しくて・・・・・哀しい。

 「今、風呂と服の用意させてっから、体あっためて着替えろよ」

 風邪引いたらしゃれになんねぇぞ

           

 びしっと私を指差し、道明寺さんは部屋の扉を開けた。

 「あ、あのっ・・・・・」

 思わず呼び止めてしまう。

 「・・・・ん?」

 「・・・・・滋さんと・・・結婚されるんですか・・・・?」

 「・・・ああ、あいつに聞いたか?」

 ふわりと微笑む彼に、心がうずく。
 この人は・・・・・こんなに穏やかに微笑む人だっただろうか・・・?

 「親もうるせえしな・・・」

 「そう・・・・・ですか・・・・・」

 「・・・・ショックか?」

 「えっ」

 想像しなかった道明寺さんの言葉に、俯いていた顔を上げる。
 
 「一番早く結婚決まっちまったしな。滋に負けるの、ショックだろ?」

 「・・・・そうですね。かなりショックです」


     ―――嘘
        滋さんが私より早く結婚することがショックなんじゃない


 「でも、相手が道明寺さんですもんね・・・」


     ―――そう、相手が道明寺さんだから・・・・


 「負けてもあまり悔しくないです。むしろ安心してますよ」

   
     ―――相手が道明寺さんだから
        ずっとずっと、叶わないとわかっていても、諦められなかった人だから・・・

 
 心とは裏腹な言葉。
 気持ちとは正反対の表情を浮かべ、私は答える。



 「良かったですね。おめでとうございます」 
 

      ―――結婚なんかしないでください


 「私たちも、これで少し安心できます」
   

      ―――『誰か』のものになんかならないでください


 「道明寺さんのことは、滋さんに任せられますからね」


      ―――好きなんです

 
 「道明寺さんが暴れても、滋さんだったらきっとなだめられますから」


      ―――ずっと 好きだったんです・・・・・


 暴走する気持ちを抑えようとすると、体のどこかにシグナルが出る。
 今回だって、例外じゃない。
 ほら・・・・道明寺さん、驚いた表情で私を凝視する・・・・・

 「ど・・・どーしたんだよ・・・?」

 溢れる涙。
 もう、どうすることもできない・・・・

 「どうもしませんよ。ただ、目が痛くなっただけなんです・・・」

 気にしないでください・・・と、涙を拭う。
 が、一向に止まる気配はない。

 「・・・すみません、用事を思い出したので帰ります。このままで大丈夫ですから・・・・・」

 未だ血の止まらない足を、きもち引きずりながら、道明寺さんの横を通り抜ける。
 そのまま彼を振り返ることなく、私は道明寺邸を出た。



















 「ねえ彼女、一人なの?一人ならさ、俺たちと遊ぼう・・・・」

 なれなれしく声をかけてくる男に、一瞥をくれてやる。
 少し睨まれただけで、彼らは肩をすくませ、尻尾を巻いて逃げて行った。
 ・・・・・これで何人目だろう、声をかけてきた人は・・・・・


 あれから。
 何とかタクシーを拾い、大通りへ出た私は、再びエステへと足を向けた。
 流石に同じ場所へは行けなかったが。

 濡れた服を着替え、足の怪我の処置をしてもらい、
 フェイスマッサージで気持ちを落ち着ける・・・はずだったのに。
 一度沈んでしまった心は、ちょっとやそっとじゃ浮上しない。
 それどころか、もう二度と浮き上がれないんじゃないか・・・と、再び憂鬱な気分になった。



 「ねえ、彼女こんな所で何してるの?彼氏待ち?」

 ・・・ああ、本当に五月蝿い。
 一人にして欲しいのに、そんな些細な願いさえも聞き入れてもらえないなんて。

 「・・・・・」

 無言で睨みつける。

 「・・・・・ご、ごめんね・・・・・」

 今までの男たちと同じように、怯えた表情で『回れ右』をする。
 ・・・まったく、こんなに簡単に引き下がれるのなら、最初から声をかけてこないで欲しい。

 人とは『矛盾』の中で生きているもので、一人にはなりたいのに、静かなところには居たくない。
 何も考えなくて済むような、雑踏の中に身を置きたいのに、誰とも話したくない、関わりたくない。
 結局、いつものクラブに顔を出してしまうのだ。
 ・・・知った顔にも会いたくないのに。

 「かーのじょ」

 ・・・・・いい加減にして欲しい。
 一人で静かに飲みたいだけなのに・・・・・そんなことも許されない。

 「一人で飲んでんの?淋しくない?」

 大きなお世話だ。
 一人でいたいから一人で飲んでいるのに。

 「あ、結構冷たいんだ。ねえ、こっち向いてよ」

 いちいち睨みつけるのも億劫だ。
 こんな輩は、無視するに限るのかもしれない。

 「ちょっと、可愛いからっていい気になってないでよ、顔ぐらい見せろっての!」

 強引に私の肩を引き寄せる。
 流石にこれには参った。

 「や・・・・・離してくださいよ・・・っ!」

 「可愛いねぇ、『離してくださいよ』だって」

 私の力では、到底太刀打ちできない。
 男はなおも私を引き寄せようとする。
 ・・・どうしてこんな目に遭わなければいけないんだろう・・・・・最悪だ。

 「本当に離してくださいっ」



 「あれ?人の彼女に悪さする奴はっけーん」


 
 背後から、聞き覚えのある声が響いた。

 「・・・あんた誰?」

 「お前が口説いてる女の彼氏」

 『彼』は、私を抱く男の腕を掴み、ひねりあげる。

 「彼女嫌がってんだろ? 嫌がる女に手ぇ出す男なんて、最低だね」

 鋭い目で睨まれ、男は一瞬身を引く。
 そのまま私の肩に置いた手を引っ込め、退散して行った。
 ・・・・・もちろん、情けない捨て台詞を残して。


      


 「・・・・・気をつけろよ。こんな所に女一人でいるなんて、恰好の餌食だぞ」

 「・・・・・すみません」

 「謝る前にお礼。『すみません』じゃなくて『ありがとう』。これ基本ね」

 そう言うと、西門さんはふわりと微笑み、私の横に腰を下ろした。
 バーテンダーに『いつもの』と言うと、肘をついて私を見る。

 「・・・・・ただ事じゃなさそうな雰囲気だね」

 「・・・別に」

 「・・・そんな腫れぼったい目で言っても、信憑性ないよな・・・」

 ウィスキーを一口舐めると、らしくねぇな・・・と苦笑した。
 その一言が頭に来て、私は思わず立ち上がる。

 「・・・『らしくねぇ』って何なんですか?!」

 「・・・桜子?」

 「ねえ、『らしくない』ってなんですか?『私らしい』ってなんですか?」

 落ち着けよ・・・と、西門さんは私の肩を叩く。
 が、そんなことじゃ落ち着けない。
 その手を振り払い、なおも彼に詰め寄る。
 
 「私らしいって・・・西門さんが、私の何を知ってるんですか?
  何を基準にして『私らしくない』なんて言うんですか?
  どうしてそんなこと言うんですか?なんで?どうして?」

 焦る西門さんの顔が涙でにじむ。
 
 「ねえ・・・こいつ何杯飲んだの?」

 バーテンダーに尋ねるも、彼も困惑した表情で首を振るだけ。
 当たり前だ、当の本人だってわからないのだから。

 「私らしくない?そんなの西門さんが決めないでください。
  『らしい』も『らしくない』も、そんなの私が決めるんです。
  ちょっといつもと違うだけで、そんな言葉でくくって欲しくないっ!」

 際限なく身体に流し込んだアルコールと、昨日からの心の負担で、自分に歯止めがきかない。
 頭で考えるよりも、口が先に動いてしまう。
 思ったことが、そのまま言葉になって流れ出る。

 「目が腫れてるのが何?あたしは泣いちゃいけないの?一人で飲んでちゃいけないの?
  あたしはいつもあたしらしくなきゃいけないの・・・?」

 「桜子・・・・」

 「そもそも、あたしらしいって何?いつも一歩下がってること?いつも冷静でいること?
  人に涙を見せないこと?
  そんなの、全部作り物に決まってんじゃん」

 いつも冷静に状況を判断して、行動して、少しお高くとどまって見せて。
 それは、私が作り上げた『桜子』だ。

 牧野先パイのような強さもなく、滋さんのような行動力も無い

                       
     

 外見のコンプレックスこそなくなったものの、内面で勝負できるような武器を、私は何一つ持っていない
 そんな自分が嫌いで、少しでも彼女たちに追いつきたくて、一生懸命自分を作ってた

 牧野先パイに無い繊細さと、滋さんにない落ち着きを、どうしても自分の物にしたくて
 彼女たちと同等の位置に立つには、それで勝負するしかないと思ってた

 弱い自分を隠すために、一生懸命外壁を作って・・・
 


 みんなが知っている『桜子』なんて、ただの偶像に過ぎない

 
 
 「好きな人が、あたしじゃない人と結婚するんだから、悲しくて泣いて当然じゃない。
  一人で飲みたくもなるじゃない」

 「・・・・・・」

 もう、自分が何を言っているのかわからない。
 涙で視界がかすみ、西門さんの顔さえ見えない。

 「もうずっと、牧野先パイや滋さんよりも、ずっとずっと前から好きだったのに、自分の気持ち、
  まともに伝えてもいないんだから・・・」

 今になって後悔する
 どうして『好き』と伝えられなかったんだろう

 牧野先パイよりも、滋さんよりも
 道明寺さんのこと、誰よりも好きだったのに・・・・・

 今になって自分を責める
 どうして滋さんと闘わなかったのだろう

 道明寺さんと牧野先パイが別れた時点で、
 私たちは同じスタートラインに立ったはずなのに

 物分かりのいいふりして、弱い自分に言い訳してた

 『彼女と別れて、傷心の男につけこむの?』

 繊細で冷静沈着な『桜子』には、どうしてもできなかった
 自分で作り上げた偶像が、自分の首を真綿で絞める
 苦しくなって、もがいて、ようやくその過ちに気づくんだ・・・・・










 
 私が覚えているのは、西門さんのシャツの模様とコロンの香り。
 真白な記憶の中で、それだけが鮮明に輝いていた・・・・・














 「・・・・・・・・・・・」

 頭が・・・痛い。
 ゆっくりと目を開けると、視界に飛び込んだのは見慣れない天井だった。

 「・・・・・・・・」

 頭に響かぬよう、ゆっくりと起き上がる。
 あたりを見回しても、何の見覚えもない。
 ここは・・・・・どこだろう・・・?


 「お、目ぇ冷めたか?」

 
 声のする方向を見る。
 腰にバスタオルを巻き、濡れた髪を拭く西門さんが、ベッドの隅に腰掛けた。

 「身体の調子は?」

 「頭が痛いだけで・・・・・」

 その時、自分が浴衣姿であることに気付く。
 浴衣以外は・・・・・何も身につけていない。

 「・・・昨日、良かったよな・・・」

 にやりと笑う西門さんに、思わず枕を抱きしめる。

 「・・・・嘘だよ」

 失恋して酔っ払った女を抱く趣味、俺にはねえよ・・・と、私の額を指で弾く。
 そのまま指差した方向を見ると、奥の部屋にベッドがひとつ。
 誰かが・・・西門さんが眠っていたのだろう、シーツが乱れている。

 「・・・でも、浴衣・・・」

 「酒に酔って吐いてんのに、服着せっぱなしにはできないだろ?今更隠すなよ。
  お前のは前に一度見てる」

 言いにくい台詞もさらりと言ってのける彼に、私は思わず笑ってしまった。

 「・・・よし、笑えるな」

 ほっとしたように息を吐く。

 「シャワー浴びてこいよ。頭がすっきりするぞ」

 慎重にベッドを抜け出て、バスルームへと向かう。

 「・・・・・西門さん」

 途中、足を止めて西門さんを振り返る。

 「・・・・・覗かないでくださいね」

 私の言葉に、『バーカ』と笑った。









 散々の醜態を見せたクラブからそれほど距離の無いシティホテルを出る。
 朝の日差しが、二日酔いの頭に燦燦と照りつける。


 「・・・・・西門さん」

 
 半歩前を歩いていた私は、歩みを止める。

 「・・・・・昨日の私、らしくありませんでしたよね?」

 「・・・そうだな」

 「・・・もう少しだけ、らしくない私で突っ走っても、いいと思いますか?」

 「・・・・・・・」

 返事は・・・無い。
 不安になり、振り返ろうとしたところで、頭をポンポンと叩かれた。
 
 「もう少しじゃなくて、ずっとそのままでもいいと思うぞ」

 「・・・・・・・・・・」

 「・・・・きっと、疲れちまったんだよな、『自分』を演じすぎて」

 「・・・・・・」

 ・・・やだな・・・
 泣かないでいたかったのに、自然と涙が零れ落ちる。

 「・・・司に見せてやれよ、『らしくない』桜子をさ。そしたら、多分『らしくない』司が見れると思うぜ」

 「・・・・・」

 「・・・最後くらい、けじめつけてみたらどうだ?」

 「・・・・・・」

 ぐっと涙を拭い、西門さんを振り返る。
 精一杯の笑顔を浮かべ、精一杯虚勢を張って見せた。

 「・・・『らしくない』道明寺さんなんか見たくありません。『らしい』道明寺さんに、思い切り振ってもらいますよ」

 「いい心がけだな」

 西門さんが笑った。












 叶うよりも、もっと幸せな恋があるのかもしれない
 叶わないよりも、もっと残酷な恋もあるのかもしれない


 ・・・私でも、見つけられるのかな?
 『幸せ』な、恋

 

 Farewell・・・
 踏み出せなかった一歩を、今踏み出してみようか・・・・・? 
 
 
 
 

                    

 
      
     
 *****fin*****
 
 

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